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からだにいい「清掃人」入門体験風
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03 誰にだって、過去はある
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第三章
清掃を生業にする人
過去もあり
昼飯！ 月に10日ほど、不定期に出勤する私は、前日の晩酌のおかずと佃煮などで弁当を作ってもらう。ポットに熱いお茶と。弁当仲間は他に2人。50代半ばでスタッフの中では二番目の年長者であるFさんも、愛妻弁当・おかずとご飯と二つの容器をきちんと布でくるんで持ってくる。
もう一人は最近になって常勤（特定のビルなどへ毎日出勤する）から転職してきたHさん。彼の弁当は、わたしのおかずとご飯が一緒に入った容器の、およそ3倍の大きさの容器にぎっしりとご飯が詰まっている。おかずはアルミホイールに入っている。漬け物その他。ご飯には梅干し、味噌（後になって分かったのだが、ご飯になにやら茶色の固まりが散見されたのだが、味噌をまぶしてくるのだそうだ）、そして900ml入りのペットボトルに水（自宅より持参・これが夏場になるともう一本前夜に製氷室にいれでおいて、そのまんま氷になったボトル、少しずつ溶けて冷たくなった水をうまそうにすする。制服出勤者、趣味はギター、Fさん相当ためこんでいる、と私は見ている。
残りのメンバーの内、コンビニ弁当派よりはラーメン屋へ行くほうが多い。最も早く弁当買って帰ってくるのが副主任の〝トリサン〟いつも運転してくるので、そこが落ち着くらしく狭い運転席で食事、私が見ている限りでは100パーセント、カップ焼きそばだ。それに菓子パン。コンビニで買う弁当に迷ったりしないので、早いのかもしれない。夏になるとこれに冷や奴がプラスされる、フシギな昼飯。
今日の私の相方のウッチーとモク仲間の〝コージさん〟はラーメン派。仕事場の巡回に来る部長が時々“ラーメンばっかり食ってないで”とファミリーレストランに誘うらしいが、“あいつら、付け合わせの野菜をちっとも食わない、だからすぐに風邪を引くんだ”と、どうやら、風邪で……と休むことが多いらしい。7時に事務所に出勤する毎日、家族と同居でもしっかりした朝食を採ってくるとも思えない。
そこへいくと、時々一緒になるパート仲間のOさんは、夜中の仕事場も持っているそうで、10時半の休憩には持参の弁当を“朝食です”と食べ始める。昼にはにぎりめしをもう一つ。そしてきれいに皮をむいたりんごをラップにくるんできて、デザートに。かんきつ類になることもある。立派な昼食だ、ウッチーに見習わせたい。Oさんは箸を使わない、いつもスプーンで食べる、理由を聞いたことはない。
ラーメン組を除いては、班長の携帯アラームの鳴る1時5分前までは車で仮眠。今日も事務所を7時半には出ているはずだから、皆家を出たのは6時かその前ということになる。腹はできたし、車は窮屈だが暖かい、ラーメン組は帰ってきても車の扉を開けて目を覚まさせるのに遠慮して、日溜まりでたばこだ。
スタッフのほとんどは、ふだんあまり話をしない。一口で言ってしまうと、話をすることのコミュニケーションが苦手な人が多い。また、そんな必要のない仕事場だから、この会社にいる、ともいえる。この時間話をしているのは〝たかちゃん〟と〝ふじたさん〟、二人とも途中入社組で少なからぬ共通点は、ある。
たかちゃんは金融関係の営業マンとして、仕事もアフターファイブも相当こなしてきたようだ。それがたたって奥さんの両親から離婚訴訟を起こされ、裁判の結果慰謝料とともに家族を取られることに。唯一、小学校低学年の長男とだけ（他に長女あり）、年に数回の面会を許され、いつも次のデートを楽しみにしている。現在、足立区のアパートに一人住まい。よく駅前で飲んでは自転車の酔っぱらい運転で転んで、交番の巡査に注意されているらしい。酔っぱらい運転の話はみんなの前でよくやるので衆知だが、子供の話を知っているのは部長他数名。話の輪ができているとすれば彼の周りで、と言ってもかれの独演、みんなは聞き役だ。
ふじたさんは私より1カ月年長のチームの最年長。50歳で事業失敗。離婚して以来一人暮らし。こちらはもう成人した娘さんが、時々連絡してくるらしい。月に1回定期清掃に行くビルの常勤だった女性と2年前から同居。“今時になって同棲なんておしゃれですね”と言ったら、“正月は「うちのぶた」と二泊三日で石和温泉に行って来た”と言っていたので、こちらは第二の人生楽しく始まり、といったところ。 |
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