やましたさんちの玉手箱
ジャックの記事
連載
01 鹿島灘はまぐりのすき焼き
02 八重の故郷 会津若松の「こづゆ」
03 明石海峡 いかなごの釘煮
04 千葉・九十九里 太巻き寿司 銚子蛤と、ながらみ
05 能登の調味必需品 いしる
06 春のご飯 大根の菜飯(なめし)
07 あさりで深川丼 あさりご飯
08 もんじゃは ゆらゆら波の上
09 秋田 ハタハタをおいしく
10 ちぎっては投げ の ひっつみ汁
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食べ歩き 全国家庭料理47選

06 春のご飯 大根の菜飯(なめし)

 ざっくりした大根の葉の舌触りを楽しむ素朴な菜飯から、粉のお茶を思わせるほどに手間をかけて、葉の香りを味わえる懐石風のものまで、作り手次第でいろいろ楽しめる菜飯。新茶の頃になって、細引き大根(葉が伸び始めた大根を畑から間引いて取るもので、間引き大根とも言われます)が取れる頃に是非味わいたいものです。
 細首大根、私たちにはなかなか手に入れることが出来ませんので、専門店で味わうことになります。といっても、一般に市販されている大根で、我が家風の菜飯を炊くのもいいものです。ちなみに、我が家でもユフィの炊く菜飯が、春のはじめによく食卓にのぼります。

 菜飯しは、古くは武将・石田光成の娘の「おあむ」が書いたといわれる日記に、兄たちが猟に出かれるときに菜飯しを炊いたので、それをとても楽しみにしていた、という記述があるそうですから、歴史はずいぶんと古いようです。
 昔の地名である尾張、三河、駿河の地方を訪ねると、ところどころで菜飯と田楽を食べさせる店を見かけます。東海道の宿場を中心に発展し、残ってきた料理で、豊橋や岡崎周辺では専門店もあるようです。
菜飯 田楽セット料理
よし膳の菜飯 田楽セット ごま豆腐、お吸い物、デザートは冷たいかぼちゃにあずきをのせたもの

 菜飯のルーツは、食物の乏しかった時代に、ご飯の量を増やす目的で、大根、いも、菜っ葉類などを入れて、混ぜご飯として食べていたものです。やがて東海道のの宿場が整備・発展、旅人相手の商いとして店で供されるようになって、香りを楽しむ料理としてまで変身して行ったのです。
 大根の葉が使われるようになったのは「三河大根」とよばれる地元の名産野菜が豊富に使用できたことも、一因であったのでしょう。

 一般の家庭では、大根の葉をそのまま茹で、包丁でたたきます。茎がありますが、歯ざわりが楽しめるのでそのままでもよいでしよう。一度菜飯を炊いてみて、その後の『たたき具合』の参考にするといいでしょう。

 専門店での行程を参考までにご紹介しておきます。
一 用いるのは細首大根の葉
一 葉脈を取り除き、いったん湯がく
一 冷水にとって30分ほど、さらす
一 水あげをした後、包丁する
一 厚手の鍋で約1時間空炒り。ふりかけ状になったら、ふるいにかけ、細かさを揃える

採れたての細首大根
採れたての細首大根
茎を除く
茎を除いて葉を取る

葉を細かくしていく
包丁で細かくしていく
手間をかけて より細かく
手間をかけてより細かくしていく

鍋で乾煎り
鍋で乾煎りする 
ふるいにかけられた葉
ふるいにかけてより細かくされた葉

ご飯に混ぜる
炊き立てのご飯に混ぜる

 炊き上がったご飯の熱いうちに葉を混ぜ込みます。熱いうちほど葉の香りが広がっておいしいのですが、あまったらおにぎりにしておいてもおいしいそうです。
 ジャックが頂いたのは静岡県の金谷にある『よし膳』。仕上がるまでに手間がかかるので、予約で営業しています。

お茶の畑
クイズにも時々登場する光景。茶畑にいくつもの柱が。これは霜よけの風車。新茶の季節の前に霜が降りることがあるので、葉を守るために設置されているもの。

金谷土人形
 子供の成長や商売繁盛の願いを込められた土人形は、各土地の土と色彩を伝統にした郷土玩具として親しまれています。金谷でも江戸時代から作られていたようです。明治以降絶えてしまっていましたが、復活。静岡の郷土人形として金谷周辺では節句には衣装雛と共に飾られているようです。
金谷の土人形
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家庭料理と食材紀行 日本の味めぐり

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