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團と菊 歌舞伎座新しくなった と言うけれど

『團菊祭 五月大歌舞伎』見にいってきました。ジャックが歌舞伎見るのは、ほとんど初めて。三月、四月の歌舞伎興行についてはサーヤとユフィが『娯楽室』で書いていますのでそちらもどうぞ。

日の丸と歌舞伎座
五月三日 日の丸と歌舞伎座

歌舞伎座の絵看板
今月の絵看板

パンフレット

 歌舞伎の楽しみ方は、人、それぞれで、サーヤのように、歌舞伎をつまみに歌舞伎座を食い尽くす、というのも、ごく少数派とはいえ、あることは確かでした。
 そして演しもの(演目)を見たい、という人。今回で言えば『勧進帳』であり『極付 幡髄長兵衛』。また、役者のファンであって、十三世・團十郎(現在では市川海老蔵)と尾上菊五郎が共演する『團菊祭』は、格好の演目という人も多いことだと思います。

 そして、初心者の私は、どれも楽しめるのですが、特に『長唄囃子連中』の『音楽』を聞く、のが楽しみ、という人もいるのではないでしょうか。唄い手と、三味線、笛、小鼓、大鼓(おおかわ、ともいいます)、太鼓、舞台袖の黒御簾(くろみす)の中で大太鼓、と男性コーラス(ただしテノールのみ)と室内楽といった音楽です。
 そしてもう一つ、舞台衣装の色彩が楽しめるのも歌舞伎ならではのものでしょう。私が見た夜の部『幡髄長兵衛』は、いわばヤクザの出入りのような粗筋で、出演者の衣装に華やかさはありませんが、例えば長兵衛が水野屋敷へ出向くところで、舞台上で裃(かみしも)を身に着ける一部始終は見るものを静かに鑑賞させますが、この裃の色は青のようであり、鼠色のようであり、舞台ではこの色だけが引き立ちます。この色、日本の伝統色から言うと、多分『浅葱色』といえるのではないか、と思うのです。

 ということで、私の今日の興行では『新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子』が楽しめました。

 菊乃助の小姓弥生は、舞がまだこなれていなくてお稽古のままの感じ、よく舞ってはいるけれど「女が硬い」。女形ではないのだから仕方がないのか。獅子になってからは、流石に見せてくれたけれど、ジャックは胡蝶の二人が可愛かったとのこと。 byユフィ

 ここでちょっと、脱線。
 もう二昔前、電通から、当時銀座にあった電通ギャラリーで『日本の伝統色』というテーマで企画展示をしたいので、物、を集めて欲しい、という誠にアバウトで難しい仕事を頂いたことがありました。咄嗟に思いついたのは『相撲』であり『歌舞伎』であり『皇室』であったのですが、さすがに皇室関係は物の展示は不可能、まずは相撲から取り掛かることに。
 相撲で使われる締め込み・まわし、はほとんどが博多織、ということで地元の織元へ。そこの社長さん、企画に賛成してくれて、なんと、ここで織られた、当時もう引退されていた大鵬親方が現役時代に使っていた化粧回しが展示に貸し出されるよう、その場で親方に連絡してくれたのです。

 後日、親方のお部屋へご挨拶に。お貸しいただく化粧回し一式・横綱 太刀持ち 露払い を見せていただいた時のこと、親方の説明。横綱の回しの下の部分の綱の下がりが擦り切れています。“これは、長い間、綱を勤めたあかしです、横綱は土俵入りでいろいろな動きをするので、下がりの部分が土俵にこすれて、こうして擦り切れてくるのです”と。
 もちろん、この話は後日ギャラリーで展示したときのパネルで説明書きして、観覧者の興味を引くことになりました。

 そして歌舞伎の色。人づてに、歌舞伎座の衣装部に、『色名帳』という衣装に使われる色の見本帳がある、と聞いて松竹の広報部に交渉して、とりあえず見せてもらうことに。もちろん、昔の歌舞伎座、ごった返しているような衣装の部屋で見せてもらったもの。随分使いふるされたような、和紙で綴じられた分厚い帳面、全てのページは、布の見本が貼り付けられていました。
 残念ながら、帳面自体は貸し出せない、ということで、展示の内容を説明したうえで、何ページかの写真を撮らせてもらい、展示しました。この写真パネルも興味をもって見て貰いました。

『日本の伝統色』を検索すると、赤、橙・茶、黄、緑、青、紫、白・灰・黒 の各系統色がずらりと並んでいるので是非覗いください。日本には、こんなにもたくさんの色があったのかと、改めて日本の伝統のすばらしさに感じ入ります。

 さて、歌舞伎に戻って。色味に乏しかった『幡髄長兵衛』ですが、三幕目。水野屋敷での湯殿の場面で、打って変わって、長兵衛が白地に大柄の模様の浴衣を着て現われ、目を奪われます。ここでだまし討ちにあって、幕となります。

 これ見てて、また脱線。
 我が父は、派手な浴衣を着て、夜中に卒中で死にました。
 私が大学を卒業した春、母ががんで病死。一人になた父に“しばらく俺のところに来い”と吉祥寺に住む長兄が父を呼んでくれました。翌年の秋、給料日に土産を持って兄の家に。当然泊まるつもりで兄と一杯。そこへ、風呂から上がった父が、兄の派手な白地の浴衣姿で“おやすみ”と。それ見ていた兄が“おっ 幡髄長兵衛みていだな”と。
 その晩、父と枕並べて寝たのですが、朝、兄の“ジャック起きろ、親父死んじゃってる”の一声で飛び起きました。前の晩、父もちょっと一杯やって寝たようなのですが。
 後日、兄は“長兵衛 なんて縁起でもねえこと言っちやったかなあ”と、くさることしきりでした。

 そしてまた歌舞伎、いや歌舞伎座に戻って。この日、祭日、満員のせいもあって弁当売り切れ。サーヤだったらうるさかったろうな。幕間、売店で私はいなりずし。相撲の遠藤だったら一口で食っちゃいそうな上品物、800円、高え。ユフィ“私のカツサンドなんか1.000円よ”。野球場もそうだけど、なんでこういうとこ、こんなに金取るのかね。缶ビール、410円、高え。10円は消費税だろうけど、もともと400円も取ってたんだろ。
 ジャックは物見高い、近くのおばさん、家から持ってきたらしいおにぎり食ってた。これが歌舞伎見物のツウってもんだなあ。
 もう一つ、劇場の案内のおばさんたち(もちろん、お姐さんもいるけど)、みんなブラウス、スカート、ベストスタイル。なんか、健康ランド行ったみたい、着物着ろとはいわないけれど、世界の歌舞伎だろ、なんとかならないかね。
 もう一つ、弁当買った売店、ジャックが前に行った『篠原演芸場』の勝ち。味も素っ気もなし。


歌舞伎座の記事はユフィとサーヤも書いています。
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