母の三回忌は　母の結婚式場で

母が逝って早くも三回忌。2年目の命日に営むので正確には2年目になる。
告別式・四十九日・百か日の納骨・一周忌・三回忌と、とても忙しかった。
しかも火葬場が混みあっていて、3日も自宅に居てくれたのでその間はゆっくり出来たけれど、その後があわただしかったことを思い出す。

母の誕生日花がアイリスなので、お寺の法事のときにはいつも、アイリスと白い花の花束を作って供えている。
一周忌の法事はお寺の集会室を借りて会食をしたが、がらんとしていて寂しいし、会席弁当だったので母の遺言「皆なに美味しいものを」が守れず心残りだった。
男性達はその後寺の近くの蕎麦屋に寄って飲み直したらしい。

ということで三回忌はもっと上等な場を考え、都内有数の結婚式場(昔は料亭)の日本料理を予約した。
ここは母と父の結婚披露宴をした所と耳にしていて、前から予定していた。
ただ、親戚がみな年老いたので遠慮していたのだが、皆集まりたいという意向だったのでお集まりいただいた。
寺からの移動が大変だった。
タクシーで分散して、と思ったのに全員が電車でいいと移動し40分近く。
都内でよかった、とつくづく思った。

離れ風の座敷の外には遣り水も引かれていて、さすがに座敷も豪華な造り。
料理も申し分なく楽しめた。
ここで、常々疑問だったことを年上の従姉におそるおそる聞いてみた。
「母がこの料亭で結婚披露宴をしたらしいのだけど…」
「そうよ！　子ども心によく覚えているわ。田舎から上京したおばあちゃんや叔父さん伯母さん達で我が家は大騒ぎだったのよ」

あぁ、その時涙が出そうになったのを今でも思い出す。
それまではずーっと疑っていたから。
母は派手でお洒落で、少し大げさに話をする癖があって…。
結婚式の写真はないし、子どもの頃に時々連れてきてもらったこの料亭で披露宴を挙げたことも「大げさな話の一つかもしれない」と思っていたから。
三回忌のために下見に来た際、パンフレットに「当時の女性憧れの結婚式場」だったと書かれていて、疑念は膨らんでいた。

母が父に見初められたのが、銀座のデパートのネクタイ売り場。（店員と客として）
喫茶店を持たせてもらうことが条件での結婚だったと聞いていたので、この披露宴も母のおねだりだったのかも。
写真は何回かの引越しで紛失したのか？
母の遺言通りに「皆に美味しいものを食べて」もらって、ゆっくり喫茶室でお話もして、とても良い法事になった。
特に私にとっては。
「お母さん、ごめんなさい。ずっと疑っていて」
従姉の言葉に救われたのは、私の猜疑の心。
母への思慕の心、そして感謝の言葉、尽くしても足りない、と心の底から思う。

母のために作ったフラワーアレンジメント