やましたさんちの玉手箱
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同い年でもぼけは違う

母が逝って数年、母と同い年の知人達は一人は亡くなり、一人はいわゆる老人ホームでご健在の様子。
知人と言っても、昔からのお知り合いではなく、ユフィのスーパー情報誌作成のお手伝いをお願いしていた、友人Oさんのお母様お二人。

お母様お二人と言うことは、実母と義母と言うことで、早く一人住まいだった義母の方を家に迎えての生活だった。

この方は埼玉のホームに入られて、その後実母の方を迎えられたいきさつがあり、母と仲が良かったのは義理のお母さまだった。

どういうご縁なのか、三人共に同じ年生まれの同い年で、しかもあの年代で「女学校卒業」という珍しい経歴。
母は女学校卒業後、銀座のデパートガールでのネクタイ売り場。
義理のお母様は、当時では珍しかった「キャンペーンガール」だったとか。
気が合ったのはそのせいか?

Oさんのお母様は、たぶん良い家柄のお嬢様で、大学教授・研究室のお父様と結婚して家庭に入られたようで、あとの二人とはちょっと違っている。
Oさんは、義理のお母様を「ギボちゃん」と読んでいたので、ギボちゃんと呼ぶことにする。

母はデパートで父に見初められ、喫茶店を1軒持たせてもらう条件で結婚。
父が早くに他界したので、女手一つで渋谷で飲食業を始め、世田谷に家1軒持った強い女性。

ギボちゃんは、再婚してOさん宅に嫁いだ苦労人。
なんでもOさんの言うことを聞く、穏やかな性格でニコニコ笑っているような人。
母とギボちゃんは気が合って、ユフィの仕事である料理撮影の間は、Oさんと我が家に来て、待つ間に母と仲良くおしゃべりして待っていたみたい。

さて、『ボケ』の話が今日のメイン。
最近ニュースで「痴呆症で徘徊し、行方不明になって死亡」という話が問題になった。
そして、思い出したのがギボちゃんのこと。
Oさんから度々「ギボちゃんがいなくなる」と聞いていたからだ。

家事をしている少しの隙に、家を出てしまうようで、その度に交番に連絡したらしい。
たいていは近所で見つかるのだが、あるときは以前の住居のある地域まで行ってしまったらしく、「どうやって行ったのか、全く分からない」と言っていたっけ。

ホームに入ってもらったのも、この徘徊が原因で、Oさんの手も目も回らなくなったかららしい。
ただ、1ヶ月に2~3回は半日がかりでホームまで行っていたらしく、「とっても喜んでくれる、私だけがが頼りと言うの、可愛いのよ」と笑っていた。

我が家の母は、以前にも書いたが「まだらぼけ」なので、ふっと分からなくなる瞬間があるらしいのだが、徘徊は無かった。
ただし、下北沢に買い物に出かけて長時間戻らないことも多かったから、心配はしていたのだが、必ずなんとか戻ってきたし、「お友達と話し込んで」などとごまかすのも上手だった。

80歳を過ぎた頃から外出が減ったのも、自分で『危ない』と気づいた上でのことだったのかも知れない。
外出して帰宅できなくては、当然楽しくは無いだろうし、不安で落ち着かないだろう。
徘徊する老人達は、逆に外に出たいのだから、止めようもない。
「お母さんは大丈夫よね」とサーヤが念押しするが、そんなことその年にならなくては分からないこと…。

ギボちゃんはホームに入って、それなりに楽しく?暮らし、母はヘルパーさんに午前中は来ててもらって人に慣れたので、デイホームに週2回通所するようになり、まだらボケながらそれなりに楽しく過ごすことができるようになった。

残りのお一人、Oさんのお母様は、いろいろ事情はありながらも次女のOさんと暮らすようになったことを、とても喜んでいた。
しかし。Oさんにとっての実母との新しい生活は、夢見たようにはうまくは進まなかったらしい。

「血のつながり」は時として、すごく邪魔に作用することもあるのだ。
義理の中なら我慢できることも、実母と娘では我慢できずにぶつかることが多いのだから…。
お互いの我がままと我がままのぶつかり合いということか。

我が家は結婚当初から「マスオさん」だから、何十年の経験で分かっている。
Oさんには言っても分からなかったのが、半年もしないでなんとなく分かってきたみたい。

お母様は85歳過ぎても、女学校の同窓会やクラス会に出かけるのが楽しみで、一緒について行くから「少し待っていて』の言葉にいらだって、一人で出かけてしまうらしい。
それだけ身体も頭もしっかりしいる証拠なのだが、娘としては心配だろう。
しっかりしていても心配、ボケていても心配。

我が家の母のように、「家が大好き」な老人は、あまり心配は無いだろう。
自分で働いて、自分の好きなようにリフォームもして、娘夫婦を従え、孫娘はおとなしく言うことを聞いてくれる、最高の状態で、満足だったろうな、きっと。
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