カズンの記事 |
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狭山事件 50年 カズン真実を待つ
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この項 カズンが書く
『狭山事件』知らない人多いだろうね。
去る五月一日、一部のニュースでなんとなく見た人もいたでしょう。狭山事件から50年。ジャックに聞いたら、事件そのものにはほとんど知識がないと、ただ、裁判とか、再審とか、冤罪とかで知ってはいるけど、ニュースを掘り下げて読んだことは無い、と、あのジャックが知らないこと、当事者の年代に近いカズンが、少しでも教えておきたいと、このページに書いてみたい。
狭山事件とは、ここで詳しくは書けないけれど、50年前1963年の5月1日。当時、埼玉県川越市の高校生が下校途中で誘拐され、脅迫状が届き、犯人待ち伏せに逮捕失敗し、4日に遺体発見、捜査難航、23日に近くの、被差別部落の石川一雄が別件逮捕される。いったん釈放されるが、その場で再逮捕、後自供、裁判で無期懲役確定。
31年に及ぶ獄中生活の間、一貫して無実を主張、二度に渡る再審も棄却、現在三度目の再審が審理中。
というのが、ちょっと乱暴だけど、そのあらまし。
カズンがなぜこの事件に興味を持ったかというと、この事件の数年前、カズンが在籍する高校で、在学中の女子高生が殺害された事件があった。カズンも在学中のできごとだったのだが、夏休みの期間中ということもあって、誰にも分からなかった。
その後『犯人』から新聞社に投書があり、投書どうりに、学内屋上から遺体が発見されるという事件だった。
他者が学内に入り込む要素がなく、当初から学内の人間の犯行といわれ、在校生全てに自宅聞き込みをされるという事態となり、その後『犯人』から電話での犯行声明が送られ、声から在校生が疑われ、結果、当時二部(夜間部)に在籍する、在日朝鮮人が逮捕されることとなった。被害者も二部の生徒ということもあって、俺たちで二人を知っている生徒はほとんどいなかった。
裁判を経て、死刑が確定、すでに処刑された事件であった。しかし、彼を知る何人かは“あいつはやってない”という声も多かった。
この事件を題材にして、過日亡くなった大島 渚監督は「絞首刑」という映画を作っている。女性作家の中で、彼の犯行に疑問を投げた人もいた。
そんなことがまだ後を引いていたこともあって、この事件は気を引いた。当時は新聞の報道を読むしか事件の詳細を知ることはできなかったから、俺も石川一雄の犯行という結果で、裁判情報を読んでいた。以下の書籍が出てくるまでは。
『ドキュメント狭山事件』 左木 隆三 著 文芸春秋 1977年刊 780円
『狭山裁判』上 下 野間 宏 著 集英社 1977年刊 980円
直木賞作家と、昭和を代表する作家が相次いで、事件に対する疑問を投げ始めたのを読むことで、俺もよりこの事件に興味を持つことになった。
捜査と証拠調べの杜撰さは、今では考えられないことで、現在のマスメディアがともすれば、捜査関係者より早く、正確に情報を集める時代であったら、この裁判はありえなかったことだと思えた。
こうした作品は続々と刊行されたが俺が興味を持って読んだのは、
『狭山事件を推理する』 甲斐 仁志 著 三一書房 1988年刊 1.300円
『犯人「狭山事件」より』 殿岡 駿星 著 〔この作品は小説〕
といったところで、次々と読んだ。
その後、さまざまな団体、個人、マスメディアが裁判への批判、疑問をあげてきたが、その集大成的な作品として
『狭山事件 石川一雄 四十一年目の真実』 鎌田 慧 著 草思社 2004年刊 2.200円
が刊行された。石川一雄本人へのインタビューも含めた作品、準備から七年かけての発行である。表紙には見えない裏帯の文を紹介する。
「なぜ石川一雄は自白したのか。なぜ死刑判決まで全てを認めたのか。なぜ第二審になって突然否認したのか。獄中三十一年七ヶ月、仮出獄から十年、どん底から最高裁へ放たれた無実の訴え。」
本文は、被告としての石川一雄と検察側承認との、詳細な法廷でのやりとりなどが記されており、こう言っては誠に不謹慎を免れないが、全体がまるでミステリーの謎解きを読むようで、面白いのだ。
本は一度読んで本棚にしまうと、よほど資料的な性格のもの以外は、もう一度手に取ることはほとんど無い(そうでない人もいるだろうが)ものだが、この原稿を書くに当たって、書棚から引き出し、あちこち拾い読みするうちに、もう一度詳しく読んでみたくなり、ページを繰り始めたところだ。
いずれ、三回目の再審結果が出ることによって再びこの事件の詳細が検討されることになるだろうが、その時の予備知識として、是非読んでもらいたと思い、紹介した。 |
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