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三種の虫が現れたフシギなベランダ

 いささか旧聞(きゆうぶん)に属する話なのですが、2024年3月1日、産経新聞に“啓蟄に寄せて、東京でも、公園や叢でもいろいろな虫が見られる、近くで虫を見つけてみては”というような主旨の記事が掲載されました。そこで思い出したのが、マンションの比較的高い階に住んでいる我家のベランダに、三種類の虫が現れたのを思い出して、確か、写真でも撮っていたなあ、と探し出しながら、この虫たちの、不思議なベランダでの出来事を、紹介する次第です。

      ベランダの壁で羽化した蝶
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 わが街江東区は「水彩都市」を標榜しています。昔ながらの下町と、湾岸近くの新しい街とが混在している街。私が住んでいる地区は、あちこちに運河がめぐらされていて、それに沿って遊歩道が整備され、水彩都市の面目も感じられるところになっています。しかし、当然のこと、上流も下流もなく、流れは当然としてなく、水と土の接点となるところが殆どないのです。
 だからでしょうか、水辺には切り離せない、トンボやチョウの姿がさっぱり見られません。私の散歩コースの一つ「辰巳の森海浜公園」は、辰巳国際水泳場に面している辰巳運河がありますが、オリンピックを控えて護岸工事を行ったせいか、ブロックの手前は雑草(牧野博士によると、雑草という名のものはない、ということですが)が背丈より高く伸びて、水辺にヤゴが育つような環境にありません。


国際水泳場に面する運河、川辺はあるが水辺は無い

 一方、辰巳の森の反対方向にある「都立木場公園」も広大な緑地です。しかし、こちらにも水辺がありません。江戸の伝統行事の一つ、公園内での木場の角乗りが有名になっている池も、材木が浮いているだけで、時折、アヒルが数羽陽にあたっている様子が見られるだけで、ヤゴが生息する環境にはありません。

木場公園の中央付近にある貯木池
                     
 23年初夏は、梅雨と夏の境がよくわからないような、暑い日が続きました。そんなある日、いつものように、朝、ベランダの植木たちに水を遣ろうと、ベランダに出ようとしたときでした。ガラス戸を開けたところの壁に、葉っぱかな、ゴミがくっ付いたかな、と思うような茶色のものが張り付いていました。ちょっと指で突いてみたのですが、動かないし、落ちもしない、そのままにして、翌日。同じところに、同じように付いたままです。昔、家の樹の間に、『ミノムシ』がぶら下がっていたのを思い出しましたが、それは、糸のようなものに下がっていたもの。壁にくっ付いたミノムシなど見たこともない、それに大きさもまるで違う、でも、これは大きなミノムシではないか、つまんで捨てることもなく、そのまま様子をみることにしたのですが。


 次の日の朝、ベランダに出ようとして、壁を見ると、なんと蝶が壁に取り付いています、片方の羽だけだけれども。よく見ると、ミノムシ状のものは、やや凹んだように見えます、これは、蝶の羽化なのでしょう、びっくりです。近くに寄らないようにして水やりをしてから、しばらくすると、両方の羽を広げたところが見られるだろうと思い、1時間ほど経ったので確かめに行ったのですが、すでに、地用の姿はなし。辺りの植木にも見当たりません、何処かへ飛んでいってしまったのでしょう。それにしても、マンションのベランダは多けれど、多分植木の数は我が家が一番かもしれないのに、何処かのベランダに行ってしまったのかもしれもせん。


 束の間の、蝶の姿でした。
                     
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            新芽の敵、アオムシ現る

 確か、あの時も、ミカンの葉っぱだった。
 世田谷在住時代、新緑の季節で気をつけなければいけないのが、アオムシか現れること。毎日のように水やりをしていて、新しい緑の新芽にアナがないか、に気をつけていました。少しでも葉にアナが空いているようなときは、必ず小さなアオムシが何処かに隠れていたものです。うっかり見過ごすと、一日でひと枝全部の葉が食べられてしまうこともあるからです。
 アオムシを見つけたのは「キンカン」の鉢。このキンカン、こちらに転居して程なくホームセンターで買ってきたもの。3年ほど立って、ようやく、初めて、小指の先くらいの実がなって、次第に色づき始め、最初の一粒を取って、仏壇にお供えをした直後の朝のこと。ベランダに出てみたら、全ての実が無くなっていたのです。床にはキンカンの皮などが散乱。紛れもなく、ヒヨドリのせいです。転居して間もなく、ベランダにヒヨドリが来たのょ見ていたので、ここにもヒヨドリが来るのかと、新緑の運動公園を眺めていたものでしたが。

 既に2~3枚の葉が無くなっていたのに気がついて、キンカンの葉を確かめたら、指の先に小さな虫が付いているのを発見。




 でも、そんなに一度に葉を食われることもあるまい、と、その日はそのままにしておいたのです。ところが、翌日確かめに行ったところ、もうその枝先に会った5~6枚の葉が無くなっていたのです。アオムシは、その色から、できたばかりの葉や茎の色に同調していて、一見見落とすこともあるのですが、昨日、小虫を見ているので、間違いなく何処かにいる、と探しました。



二虫の連結



 居ました、大きくなっていました、一晩でこんなに大きくなっていたのが驚きでした。それも、二重連結のように、並んで、茎に取り付いていたのです。こうなっては、もうそのままにしていたら、新しい葉は全て食べられてしまいます。姿を見ると、可愛らしくも、見えないこともないのですが、ここは害虫、駆除。でした。

                     
                カメムシの6ヶ月

 
23年の初夏が暑かったことは前章でも書きましたが、そんな日のある日のこと『カメムシが大量異常発生』というニュースが流れました。農作物への被害は見られないのだが、その悪臭がたまらない、というものでした。映像が見られることは無かったか、見落としたか、どんなものかは分かりませんでした。

 高芽の付いたデンドロビュームの小枝は、ようやく根付いたところで、緑の葉は小さくてもきれいで、少しずつ大きくなっているような気配、その先端に、黒っぽい小さな虫が。見たことのない虫で、よく見ると「虫の装甲車」みたいな形。もしかしたら、問題のカメムシではなかろうかと、それにしても、突然我が家のベランダに現れるとも思わず、ネットで検索してみたら、まごうこと無く、カメムシだ。


 ニュースにあったように、葉を食うこともなく、たった一つだけ、それにしても、何処からとも、長く飛ぶとも思えず、地上からこのベランダまで、何処を伝ってきたかも分からず、不思議な気持ちで、まあ、そのままにしておこう、と。

 すっかり忘れていた、その年の11月だったある日、夕食の途中で、テレビのある壁の上の方に何やら虫が。あれ、カメムシではなかろうかと、とっさに思い出しました。這い回っています。ここへ住むようになってから、クモの姿を見たこともありませんから、これは、彼の虫ではなかろうか。それにしても、窓を開けたままにしていた覚えもなし、たまにベランダに出ることはあっても、アムールくんが出るといけないので、我が家の全員も、窓はその都度占めるようにしているのですが。


 サーヤは気がついて、アムくんが見つけると、追いかけ回して大変、私の部屋に連れて行っている間に、お父さんなんとか片付けて、と。仕方なく、タオルを振り回して落下させ、潰すのも嫌なので、テイッシュにくるんで、手近の鉢に置いておきました。念の為、翌朝見たところ見当たらず、何処かの鉢か葉わ選んで住み替えたか、と思っていました。

 年が変わって2月のこと。いつもにように、ベランダの出たあと、部屋に戻ろうと、スリッパを揃えようと、ふと見たら、小さな落ち葉と一緒に虫のようなものが転がっています、あの、蝶が孵化した壁の下です。つまんでみたら、カメムシ、あの子にちがいありません。
 何処かの鉢の下で絶命して、風に吹かれて吹き溜まりに寄ってきたか、もう一度、部屋に入ってみようかと、ここまで来たけれど、果たせず命落としたかは、分かりませんが。小さなゴミと一緒に捨てるのに忍びなく、ティッシュに包んで、一番大きな酔芙蓉の鉢に小さな穴を開けて埋葬した次第。






 余聞
 この酔芙蓉、23年末、伸び切った枝を思い切って剪定したのですが、24年3月末に其々の枝の先端に、新しい葉を付け始めました。

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