茶道の炉開きに 水仙の花が飾られた
ユフィは茶道を学生時代から続けていて、一応免許も持っている。
季節が変わって居間の絵の架け替えの際、「11月に水仙は早くないか」と言われた。
そう、水仙は『冬の花』という認識が一般的なのだが、茶道でのお稽古では「11月に水仙」と教えられていた。
理由は、茶道の11月は大事な行事になっている『炉開き』と『口切』を行うため、とてもめでたい時、この日から一年は始まるとされ、お正月のように祝うかららしい。
『炉開き』とは、春から秋までの風炉から、床に切った炉にかえること。
『口切』とは、初夏に摘んで寝かせていた新茶の茶壷の口を切ること。
流派によっていろいろあるのだろうが、ユフィは「11月の炉開きと水仙」は一つのものとして覚えているのだ。
実際に水仙の花は、10~11月に植えるのだそうで、花期は12~4月までらしい。
全国には有名な「水仙の群落」の名所があり、冬から春の風物詩としてニュースなどでも流されている。
もちろん種類は「日本水仙」で、『雪中花』とも呼ばれる「日本寒水仙」のようだ。
しかし、日本原産ではなく、スペイン・ポルトガルから中国を経て伝わったとされている。
ギリシャ神話の美少年・ナルシッサスが水面に映る自分に見惚れて花に変身した話は有名で、「ナルシスト」の語源としてよく知られている話だ。
ラッパスイセン、カップ咲きスイセン、房咲きスイセンなどの花は、欧州産らしい華やかさに溢れている。
色彩も鮮やかな黄色やオレンジで、コロナと呼ばれる副花冠が目立つものが多いようだ。
近所で探したが、なかなかニホンスイセンは見つからず、似てはいるが少し違ったし、3月4月の春咲きのものになってしまった。
日本水仙を、街中で探すのは難しいのかも…。
日本水仙のいかにも凛として清らかな花姿は、欧州原産とは思えない。
別のサイトでは、日本自生の「ニホンスイセン」とあるし、しかも学名も書き添えられているから日本原産で間違いがないのかな…。
別のサイトでは、すっかり日本の気候にも馴染んで自生したものもある、と書いてあるから日本原産ではないのかも知れない…。
白い花弁に副花冠が黄色、香りも清清しく寒い季節に少し下向きに咲く様も日本的で好ましい。
水彩画で画用紙いっぱいに描き込んでいるが、白地のために花色には黄を加えている。
葉は濃い緑だけで描いているが、見たままだから一色だっただろうか。
葉の形の動きだけで、生き生きと見せようとしているようだ。
蕾の膨らみ具合で、白と対比させ緑の色彩を加減したようにも見える。
なんとなく清らかな雰囲気はないのだが、凛とした風情は出ていると思う。
茶花として生ける際は、水仙の葉と茎を「はかま」と呼ばれる部分を破かないように外し、形を整えてからまたはかまをはかせるという、面倒くさい作業をする。
自然のままでは、葉が多くて勝手気ままな方向に向いているためだ。
茶花は「野に在るように生ける」のが本筋なのだが、そのままでは「侘びさび」を表現するには野放図すぎるためか、不必要な花や葉を取り去ることが求められる。
これが難しい!
何度挑戦しても、満足に生けられなかった思い出が残っている。
絵に描くには、見たまま感じたままがベストと教えてもらったので、茶花よりは楽かも…。 |