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現在刻語事典

其の四 柴又のシデオ君 江戸川のシバリが アガル

この項 カズンが書く

 カズンの中学のクラスメートに、シデオ君がいる。三年間机を並べたいい男だ。彼は、自分のことを○○シデオ、だという。今では有名になった、柴又の商店の息子で、時々、彼の店に遊びにいくと、お母さんが店の奥に向かって“シデオ、カズンさんが来たよ”と呼んでくれた。
 実は、本名は英雄である。彼は中学の何らかの調査票で、シデオと書いて、担任から注意されたこともある。
 名前(漢字)の通り、彼は当時の、いわばガキ大将で、同じ学校の生徒が、隣の中学のだれかにいじめられた、と言う話をきくと、子分を連れて、時間中でも殴りこみに行った。当然、戦果を上げた。
 どういうわけか、彼とは馬が合って、我が家にもよく遊びに来た。
 姉によると“カズン君いますか”と、蚊の泣くような声で訪ねてきたという。


しだり(左)がシデオ君 右・カズン・帝釈天 門前で

 当時、柴又周辺では、、と発音するのが当たり前になっていたようだ。
 それが証拠に、映画『ふうてんの寅さん』シリーズで、2作目だったか、3作目だったか、京マチコがマドンナになった編で、寅が、こんなことを言うシーンがある。
“なあに、奥様、もうすぐ暖かくなって、江戸川にシバリがアガル頃になれば、奥様の容態もよくなりまさあ”と。

 最近、主題歌をよく聞いたら、“……姓は車、名は寅次郎、シト呼んで、ふうてんの寅と発します”と歌ってたな。

 次にこの「シバリ」なんだけど、もちろん、鳥のひばりのこと。
 カズンの住んでいたのは江戸川の近く、中学生の頃には春先から秋まで、休みの日は朝も夕方も釣りをしていた。
 河川敷の「矢切の渡し」の近くには葦が所々生えていて、四月も下旬になると、ひばりが葦の中から突然あがるのをよく見たものだ。



 ひばりは葦からスッと、文字通り10メートルくらいまであがる、ひばりは飛ばないのだ、そこで突然啼きだす。ひばりはよく、“ピーピー”とか“ピーチク”と啼くというが、いえいえ、そんなかわゆい声じゃない。カズンには“ギーギャガ”としか聞こえん。そしてどんどん上がっていく。
 童謡 文部省唱歌「ひばり」では
 “ぴいぴいぴいと さえずるひばり  さえずりながら どこまであがる
  たかいたかい くものうえか こえはきこえて みえない ひばり”
かすかに聞こえていたと思っていてしばらくすると、また声が大きくなってきて、葦の中にストンと落ちる

 数年前から河川敷と堤防の大規模工事が進んで、葦のある場所がほとんどなくなってしまったが、新葛飾橋から松戸側を歩いていくと、ひばりの声を聞くチャンスがあると、シデオに聞いた。
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